ときにはバッハなど
『フーガの技法』/ジュリアード弦楽四重奏団を聴く
『フーガの技法』は諸説あるらしいけれど、バッハ晩年の未完成の作品ということになっている。 20世紀に入るまでは、「技巧」のみに徹した「中身のない音楽」などともいわれていたそうです。重要視されるようになったのは、音楽学者と演奏家による再評価(再発見)のたまもの。おかげで私たちはこの素晴らしい作品をさまざまな演奏で聴くことができる。
四声で書かれている作品なので「弦楽四重奏による演奏こそ相応しい」と私のような素人は思ってしまいますが、バッハの時代に「弦楽四重奏」という演奏形態はなかった(近いものではトリオ・ソナタがあるが)。 だから、がちがちのバッハ学者や古楽信奉者はこのCDを当然、認めないでしょう。
そもそも残されている写譜に「楽器の指定」がないことが混乱の原因なのだが、「バッハはチェンバロによる演奏を想定していた」というのが定説となっている。私は単なるリスナーなので、学問的な聴き方に縛られる必要がない。その特権で、弦楽四重奏による『フーガの技法』を愛聴している。
第一ヴァイオリンにロバート・マンがいたころのジュリアード弦楽四重奏団によるこの演奏は、ゆっくりめのテンポとあいまって、ロマン派的なバッハ解釈といっていいかもしれない。 「技巧」のみの音楽どころか、人間の生の哀しみや、人生をしめくくるに際しての達観、諦念が感じられる名作であることをこの演奏は教えてくれる(バッハをそのように聴くこともロマン派的にすぎるのかもしれませんが)。
教会で演奏するための作品(宗教音楽)ではないので、世俗音楽と分類されるが、こんなに深遠かつ崇高な世俗音楽も他にあるまい。 聖書を直接の下敷きにしていないものの、バッハの宗教心・宗教的精神が生んだ作品だと思う。
うちのCDラックには古典四重奏団や、この曲をライフワークにしているケラー四重奏団による演奏がある。確かエマーソン弦楽四重奏団も録音しているが、私は持っていない(ほしいんですが)。
| 固定リンク
「文化・芸術」カテゴリの記事
「音楽」カテゴリの記事
- いただいてしまいました。(2006.11.18)
- この夏、よく聴いたCD(2006.09.08)
- 去りゆく夏の日に(アラン・コープランド・シンガーズを聴く)(2006.08.30)
- 三崎ともやすノンストップ60ライヴ(2006.07.18)
- 華麗なる古典舞踏(2006.05.25)
「クラシック」カテゴリの記事
- 石神の丘から(2014.05.13)
- ヴァインベルクを聴く(2014.04.30)
- 日々の糧(クラシック編)(2014.04.24)
- 伊福部昭生誕100年(2014.01.17)
- 『フーガの技法』を聴く(2013.12.29)
「弦楽四重奏」カテゴリの記事
- クロノス・カルテットを聴く(2010.02.07)
- 弦楽四重奏とジャズの融合(2010.01.17)
- ヒンデミット:弦楽四重奏曲全集を聴く(2009.06.05)
- ヤコブ・リンドベルイのリュートをFMで(2007.05.14)
- 室内楽の季節(2005.11.10)
この記事へのコメントは終了しました。


コメント
フーガの技法といえば、変わり種(?)では「Sax四重奏」の録音があるはず。
残念ながら持っていないのですが、一度聴かせてもらったときは新鮮な感動がありましたよー。
投稿: ぎじん | 2005年7月28日 (木) 06時47分
ぎじんさん、どうも。
うちにある変わり種はギターソロです(ただし、多重録音)。
ならば、リュートで演奏したものがあるはず、と探しているのですが、どうやらないようです。
投稿: 斎藤純 | 2005年7月28日 (木) 07時29分
リュートと言われて、僕の友達が、ヨーロッパにバッハのリュートの楽譜を探しにいって、マイクロフィルムで記録されていたそれを紙にしてもらって持ち帰った話を思い出しました。
とすると、バッハの楽譜では楽器を指定してあるものが普通であり、「フーガの技法」も、リュートでの演奏もあってしかるべし、という感じですか?
投稿: kajipa | 2005年7月28日 (木) 09時46分
kajipaさん、どうも。バッハにはリュート組曲がありますね。
「フーガの技法」をリュートで演奏(合奏)するには、実はちょっと問題があります。
リュートの音域は(たぶん)1オクターブ低いと思います(ギターもそうです)。だから、リュートが担当できるのはヴィオラがやっているパートですね。
低音部はテオルボ(リュートのバケモノみたいなの。見た目はともかく、音はステキ!)が担当できるとして、高音部をどうするか。
そうか,マンドリンという手があるかも。
でも、以上は素人の思いつきなのでゴメンナサイ。
投稿: 斎藤純 | 2005年7月28日 (木) 14時09分
変わり種までいかないですが、アムステルダム・ルッキ・スターダスト・カルテットのリコーダーによる演奏もあります。リコーダーの素朴な音が心に染み渡ります。
弦楽四重奏だと、割と最近(?)のエマーソンSQがCD出してて、思わず買ってしまいました。ジュリアードSQはゆっくり丁寧に弾いていますね。個人的には、バッハの音楽は、形式的でありつつ、とてもエモーショナルだと思います。バロック的な形式の範囲の中で作曲していた、というだけのことだと思っています。ロマン派的な演奏も好きです。
この曲はいろいろなバージョンで聴いていますが、Saxはびっくりですね。
投稿: hayaken | 2005年7月29日 (金) 00時54分
hayakenさん、どうも。
あ、ハーゲンではなくて、エマーソンでしたね。記憶違いでした。
リコーダーも聴かれるんですね。実はアルト(しかも木製)持っているんですが、ちっとも練習できず、これまた「宝の持ち腐れ」状態です。トホホ。
投稿: 斎藤純 | 2005年7月29日 (金) 07時41分