コンサートキャラバン2005
2002年のコンサートキャラバンの感激は未だに薄れていない。
あれから3年、コンサートキャラバンが(奇跡的に)再び実現することになった。私はスタッフとして潜りこませてもらい、全7日間のキャラバンのうち4日間、同行した。
左は非公開リハーサル中のマエストロ(撮影禁止なので手帳にボールペンでスケッチ)。ショートパンツにTシャツである。鋭い指示が次々に飛ぶ。このために集められたオーケストラもそれに敏感に応じる。緊張感を楽しんでいるようすが伝わってくる。
こちらはロシアのマエストロ。みんなから尊敬と親しみをこめて「スラバ」と呼ばれている。今回はサン・サーンスのチェロ協奏曲とハイドンのチェロ協奏曲、それに急遽アレンスキーの「チャイコフスキーの主題による変奏曲」が用意された。
おそるおそるスケッチした手帳を差しだすと、私の手からペンをとってサインをしてくださった。
書き切れないほどたくさんの思い出があるが、ある日の断片を紹介したい。
小さな漁村の中学校の体育館でのこと。 「本当に来るんだろうか」 こんな田舎に世界的な巨匠二人がそろい、無料のコンサートをひらいてくれるなんて、そんなウマい話が今どきあるものだろうか。
村の人たちは半信半疑だったらしい。それでも、中学校の体育館には大勢の村人が集まった。
やがて、キャラバンバスが到着し、若い楽団員と一緒にマエストロ小沢征爾氏と、スラバことムスティラフ・ロストロポーヴィチ氏が姿を見せると、一瞬のためらいの後、拍手が起こった。
サン・サーンスのチェロ協奏曲の後、スラバの指揮でアレンスキーの弦楽合奏曲「チャイフフスキーの主題による変奏曲」が演奏された。
今年の岩手は残暑が厳しい。エアコンのない体育館で、大人はもちろん、4歳くらいの子供たちも額から汗を流しながらも目をまるくみひらいて、聞き入っている。
その姿に打たれた。
楽団員も聴衆の熱心さに感動していた。演奏者と聴衆の気持ちがひとつになって、素晴らしい演奏会になった。
聴衆を代表して、小学校6年生の女子が「小澤先生の演奏はCDで聴いています。生で聴くのは初めてです。ひとつひとつの楽器の音が素晴らしかったです。自分も中学校に進んだらフルートをやりたいです。それに、いろんな楽器にも挑戦したいです。素晴らしい音楽をありがとうございました」と挨拶をした。
楽団員が(男も女も)目を真っ赤にしている。「音楽家であることの喜び」が、その顔にあらわれていた。
スタッフも演奏家もボランティアで行なっているコンサートキャラバンは、「音楽家であることの喜び」を得ることがそもそもの目的だ。それを得るには、隠れた努力の積み重ねが必要だ。
スタッフの一員として同行するなかで、厳しいリハーサルを目にし、その努力の片鱗に触れることができた。だから、楽団員の涙も少し理解できた(っていうか、もらい泣きしましたけど)。
小澤征爾氏見たさの物見遊山、ミーハー気分で会場に来た方も、最後はまるで仏さまにでも会ったかのような顔つきで拍手を送り、盛んに目をしばたかせていた。
音楽を愛してきてよかった。
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コメント
内容とは全く違うコメントで失礼します。
今日「ベルリンフィルと子どもたち」を見に行ってらっしゃいましたでしょうか?
ただ日々を過ごすだけだった子ども達が、目標に向かってひとつにまとまっていく様と集中する・沈黙することを学ぶ様、そして粘り強い指導の難しさ、
雇用の厳しい最中にあってこそ、無駄と考えられていた文化に(人に)投資すべきという、指揮者の言葉が印象的でした。
・・・人違いでしたらゴメンナサイ。
投稿: pon | 2005年8月23日 (火) 23時59分
ponさん、どうも。
はい、行ってました。「笑ってはいけない」が印象的でした。
いろんなことを教えてくれる映画でしたね。
投稿: 本人 | 2005年8月24日 (水) 07時57分
はじめまして。
以前からこちらへお邪魔していました。思い切ってコメントを・・・・。
私も音楽が身近にあって本当によかったと思います。
クラシックに限らず、またプロ・アマを問わず、実際に演奏会を聞きにゆき、
体がふるえる感動を味わえれば、それは一生の心の宝になりますよね。
これからも斎藤さんの音楽にまつわるお話を楽しみにしています。
最後になりましたが、小説・エッセイも愛読しております。
投稿: bikki | 2005年8月31日 (水) 00時23分
bikkiさん、はじめまして。
>小説・エッセイも愛読しております。
ありがとうございます。そちらにも訪問させていただきました。「のだめ」11巻まで読了(笑)。
投稿: 本人 | 2005年8月31日 (水) 08時13分
あのお忍びキャラバンに同行されていたんですね!すごい!
先日、子どもの森に行ったときに、館長が目を輝かせてその
時の話しをしてくれました。(私は残念ながら出会えず(;_;))
本当に感動のコンサートキャラバン。音楽家が本来の「音楽
家であることの喜び」を感じられるということだけでも、もの
すごい価値のあるものだと思います。その現場にいられたなんて♪
うらやましい限りです。
えぇ、そうですとも。うらやましいだけです(笑)
いいな~、純さん!
スタッフや皆さんは大変かと思いますが、ぜひ続けてほしいと願います。。。
投稿: はむ | 2005年8月31日 (水) 19時32分
はむさん、どうも。
日露の両マエストロをプリウスの後部座席にお乗せして移動したときは緊張しました。こういうことは、もう二度とごめんです(笑)。
ところで、NPOコンサートキャラバンは、小澤氏とスラバ抜きですが、楽団員のメンバーに声をかけて、小規模ながら継続的にボランティアコンサートをおこなってきました。
そういう地道な活動が背景にあったわけです。
投稿: 本人 | 2005年8月31日 (水) 19時52分