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小沢征爾&ロストロポーヴィチ コンサート・キャラバン

 岩手めんこいテレビ公式サイトに連載中の『目と耳のライディング』の第106回と第107回にコンサート・キャラバン2005(8月23日のブログをご参照ください)について書きましたが、まだ書き足りないのでこっちに追記しておきます。

 コンサート・キャラバン2005はボランティアスタッフ、ホームステイ受け入れ先などの協力によって支えられています。演奏が行なわれる各地では事前にTシャツを販売し、これが経費に充てられた。物資の援助をしてくださった企業もあれば、多額の寄付をしてくださった個人の方もいる。つまり、市民の多大な協力と援助による活動がコンサート・キャラバンなんですね。
 もちろん、小沢征爾氏もスラヴァ(ムスティラフ・ロストロポーヴィチの愛称)も無償です。

 宮古市の浄土ヶ浜パークホテルで、宮古市民との交流パーティが催された。
このとき、オーケストラの面々が突如、楽器を会場に持ち込んだ。そして、「みなさんに感謝の思いをこめて」と演奏をしてくださった。予定外のことだった。
 曲目はモーツァルトのディベルティメントK136。
「この曲は斎藤秀雄先生が最後に振った曲なんですよ。やばいなあ」
 ほろ酔い加減の小澤征爾氏が頭を掻きつつ、指揮をされた。
 それは、正式なコンサートでは決して見ることのできない指揮で、会場にいた人々を大いにわかせた。

 吉里吉里小学校での印象的な演奏会の後、キャラバンは大槌港でランチをとった。地元の人々の手料理である。
 ランチ会場では大槌高校吹奏楽部による歓迎の演奏があった。 これが愉快な演奏で、オーケストラのメンバーも食事をそっちのけで楽しんだ。

 さらに、オーケストラの管楽器奏者たちが、吹奏楽部の部員たちの個人指導をはじめてしまった(はじめてしまった、と書いたのは、これは予定外だったため、その後のスケジュールに大きな影響を与えることになったからだ。でも、私はこういうこともキャラバンの意義と魅力なのではないかと思っている。長く待っていただいた別会場のみなさんもきっと理解してくださるだろう)。 これがひじょうに効果的な指導だった。楽器の調整から構え方、息の使い方など基本的なことなのだが、指導前と指導後の違いは傍で聴いていて驚くほどだった(指導されている先生も「わっ、〇〇くん、できたじゃないの!」と驚かれていた)。

後日、大槌町の知人から嬉しいニュースがもたらされました。あのときの吹奏楽部が、吹奏楽の東北大会でみごと1位に輝き、10月8、9日に千葉市で開かれる第5回東日本学校吹奏楽大会に進むことになったのだ。
これを知れば、オーケストラの面々も一緒に喜んでくれるに違いない。

 キャラバン・コンサートの「隠れた名物」に楽器紹介がある。各パートの奏者が趣向をこらして、短いながら印象的かつ、その楽器の特色を最大限に発揮する曲を演奏して楽器を紹介する。この「楽器紹介コーナー」を僕も毎回楽しみにしていた。
 どの会場でも同じ曲で通したパートもあれば、全部違う曲だったパートもあった(前夜、寝る間を惜しんで必死に編曲をしたのだという)。

 印象的だったのは、最初のうち、ヴィルトゥオージティというか高度な演奏技術を発揮していた奏者たちが、回を重ねるにつれて、シンプルな曲の演奏へと変化していった点だ。そして、最終日前日は奇しくも二つのパートが「ふるさと」の一節を演奏した。
 それはちょっと尋常ではない演奏だった。とても短い演奏のなかに、思いが凝縮していた。私は涙を拭きながら拍手を送った。
 東京という大都会で暮らす彼らが、日本の原風景といっていい岩手の田舎を巡っていくなかで、何か変化が起きたのは明らかだった。彼らはわずか一週間で、かけがえのない経験をした。そのことがはっきりと感じられた。

 もうひとつ付け加えておこう。
 『目と耳のライディング』にも書いたように、私の車で小澤征爾氏とスラヴァが移動したことがある。地元の人々の多くは、黒塗りのセダンで登場するものと思っていたので、意外だったようだ。小沢征爾氏もスラヴァも特別扱いを嫌う(特別扱いが必要な時と場所ではそうではないだろうが、今回はそういう場ではなかった)。だから、オーケストラと一緒にバスで移動することもあった。

 小澤征爾氏とロストロポーヴィチ氏の食事の席が別に設けられている場合がしばしばあった。小沢征爾氏は「みんなと一緒のほうがいい」とこういう特別扱いを断った。
 それが単なるポーズじゃないのは、誰とでも親しく言葉を交わすことからもわかる。各地で人々はそんな小沢征爾氏の人柄に打たれた。

 スラヴァもまた然り。車椅子の子供を抱きしめてキスをする。老人と握手を交わす。それらをごく自然にやっている。
「スラヴァという人は、音楽で泣かせ、スピーチで泣かせ、ああやって行動でも泣かせる--」
 スタッフの誰かがそう呟いた。私もまったく同感だった。

 コンサート・キャラバン2005に(すべての日程ではないが)参加できたことを私は一生の宝にするだろう。
  音楽を愛してきてよかった。

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コメント

なにか、斎藤さんの言葉だけでも身震いをしました。すごすぎる……。

投稿: トモノリ | 2005年10月 5日 (水) 17時06分

今も思いだすと身震いします、はい。


投稿: 本人 | 2005年10月 5日 (水) 19時15分

10月3日小沢征爾&ロストロポーヴィチ コンサートキャラバン一行様が、大槌港でランチをとった時、会場で歓迎の演奏をしたのは、大槌中学校ではなく【大槌高校吹奏楽部の生徒の皆さん】です。世界の小沢征爾&ロストロポーヴィチ様の前で、自分達の演奏を聞いていただけるなんて、夢のような、こんな機会は人生の中で、そうそうあることでは無い…一生の宝物になる経験なので【大槌高校吹奏楽部】のためにも、コメントさせて頂きました。

投稿: bluesman | 2005年10月10日 (月) 17時38分

bluesmanさん、どうも。
ご指摘ありがとうございます。本文を訂正します。
東日本大会では銅賞だったとのこと、よかったですね。

投稿: 本人 | 2005年10月10日 (月) 18時52分

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