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「平和の日」いわての集いを終えて

岩手県民会館大ホールで「平和の日」いわてのつどいがあった。無料だが、整理券が必要で、先着1800名募集のところ、すぐに満員御礼となった。

「風土」西木正明×高橋克彦

西木さんは資料を徹底的に検証して小説を書かれる。それは、トルーマン・カポーティが『冷血』を書いたときの手法に通じ、ノンフィクション・ノベルと呼ばれる。蛇足ながら、西木さんのノンフィクション・ノベル(要するにフィクションなのだが)がノンフィクションの賞を受賞したことがある。
克彦さんはむしろ資料の残っていない、歴史の空白部の歴史小説を書かれてきた。
そんなお二人の作風の違いなどから、同じ北東北でも秋田と岩手の県民性はずいぶん異なるという対談。

「秋田はひじょうに恵まれているため、秋田人はナマケもの、えふりこき(見栄っぱり)が多い」とおっしゃる西木さんは、諧謔の人だ。その諧謔を散りばめた話術が芸の域に達している。
秋田の作家(石川達三、小林多喜二ら)がノンフィクシン・ノベル的なのに対し、岩手の作家にミステリー作家が多いのは、「岩手は環境が厳しかったので、現実逃避というわけではないが、ファンタジーの世界にいった」からだとするお二人のお話には大いに頷けるものがあった。

克彦さんは「日本史上、東北は攻められたことはたびたびあっても、こっちから攻めたことはなかった。だから、東北から平和への思いをを発信していく意味がある」とおっしゃった。「平和の集い」の幕開けに相応しい言葉だった。

「こころ」立松和平×浅田次郎

お二人で「岩手には偉人が多いのに、地味で目立たない。控え目すぎる」と。新渡戸稲造ファンの浅田さんは「5000円札になったときは嬉しかったが、残念なことに新渡戸がほとんど知られていなかった」と悔しがる。また、石川啄木や宮澤賢治もお札になってほしいけれど、「赤貧、清貧のイメージが強いのでお札にはならんでしょうな」と。すかさず、立松さんが「赤貧と清貧とでは、だいぶ違うが」とツッコミ、会場(1800名もの方が入った)が大笑い。

立松さんによる「雨ニモ負ケズ」は法華経の教えを説いたもの。法華経の解説や説教ではなく、こういうわかりやすい詩の形で伝えようとし、しかもみごとに成功しているという解釈はとても面白かった。

浅田さんは『壬生義士伝』で岩手との縁が深いが、お嬢さんは岩手医大を卒業し、県内で研修医(?)をしていらっしゃる。立松さんはやんちゃな「好青年」(←などと言っては失礼だが)で、酒が入るとさらに楽しい人になる。

「ことば」森ミドリ×新井満

新井さんは芥川賞作家であり、電通社員(イベントプロデューサーとして長野五輪の開会式などを担当)であり、シンガーソングライターであり、映像作家である。たくさんのジャンルで活躍し、それがどれも超一流という希有な方だ。ちょっと見には近寄り難い雰囲気をお持ちだが、ふだんの新井さんはどこか豪放なところがあり、気さくな「兄貴肌」の方だ。
今回はシンガーソングライター新井満として、啄木、賢治を森ミドリさんと音楽で表現し、大いに受けた。一流のエンターテインメント・ショーを生で見せてい
ただいた。森ミドリさんの即興曲「岩手山」も素晴らしかった。

「暮らし」井上ひさし×宮沢りえ

今回の目玉! りえさん見たさに集まった方が多かった。
井上さんの『父と暮らせば』を映画化する際、「どうせ駄目だろうと思って、宮沢りえさんにお願いしたら、お引き受けしてもらって狂喜乱舞した」と裏話を披露。宮沢りえさんのこの映画にかけた思いをうかがい、大変な努力家であり、よくものごとを考える方だということがわかった。
井上ひさしさんが慰問巡演中に被曝して亡くなった園井恵子(岩手出身の女優)のエピソードを紹介すると、宮沢りえさんが感極まって涙した。終演後、舞台の袖で井上さんがぼくに「(言葉よりも)涙の力が強い」とボソッと呟いた。涙を誘った井上さんに「技あり」だったと思う。

一度、銀座のバーで宮沢りえさんにお酌をしてもらったことがある(横から「今夜の酒は高いよ」と母上)。よく気のきく女性で、しかも酒豪である。
井上ひさしさんと岩手との縁は改めて語るまでもないだろう。

今回が22回だったわけだが、「今回が一番盛り上がった。岩手のお客さんはレベルが高く、難しい話でも反応がよかった」と評判は上々だった。岩手県庁、盛岡市役所の担当職員もほっとされていることだろう。

なお、主催者の意向で手話通訳がちゃんとついた。ぼくは裏方でこのイベントに関わってきたが、妻も手話通訳で壇上に上がり、お手伝いをさせていただいた。
そういう意味でも思い出深いイベントになった。

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