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まちなみフォーラム

盛岡ブランド・フォーラム・まちなみ景観づくり「盛岡町家の町並みと暮らしを魅せる」(17日午後6時半から/盛岡市プラザおでってホール)を拝聴してきた。

菅原由美子さん(地域振興アドバイザー)の「観光とは〈くにの光を観せる、観ること〉」というお話に頷きつつ、各地の事例紹介を楽しく聞いた。「ここは道が細くて開発されず、たまたま残った地域。それでも、こんなに失われている」というのが、現存する古い町並みに共通していることのようだ。

それで思いだすのが、「ヴェネツィアは貧しさの象徴だ」という、ある美学者の言葉だ。中世に商業都市として栄えたヴェネツィアはその後役割を終えて寂れる。ところが、気がついてみると、中世がそのまま残る「貴重な観光都市」となっていた。もし、ヴェネツィアが19世紀以降も経済的に栄えつづけていれば、昔の建物は一掃されて、近代的なビルが建ち並んでいたに違いない(いや、あそこは杭を土台にした海上都市だから、ビルは無理か)。

世界自然遺産となった白神山地にも同じことがいえる。山好きのあいだにさえほとんど知られていなかった僻地ゆえ、開発の手を逃れて原生的自然をこんにちまで残すことになった。白神の自然保護運動の先駆者である根深誠氏が語った「一番遅れた土地が、最先端の土地になった」という言葉も忘れられない。

鉈屋町が「遅れた土地」「貧しさの象徴」だとは決して思わない。実際、まちなみ塾のときに公開される町屋を訪問し、その暮らしぶりをうかがうと、盛岡が誇るべき豊かさの象徴がそこにある。豊かさとは道路をクルマが埋め尽くし、高層ビルが空を狭くする都市を言うのではない。それは前世紀までの価値観だ。

都市計画によると、鉈屋町は道路拡幅によって町並みが破壊される可能性もある。この日、パネラーからも鉈屋町で暮らしている方々からも「大きな道路は古い町並みばかりでなく、コミュニティも破壊する」という指摘があった。それは「くにの光」を奪うことに他ならない。

町並み保存は容易なことではない。そこに暮らす人はもちろんのこと、我々盛岡市民が「覚悟」を決めなければ実現しない。木曽路の宿場町では「(土地を)売らない、貸さない、(建物を)壊さない」と住民が覚悟を決めて保存に取り組んだ。

改めて考えてみれば、中心市街地活性化も町並み保存も交通問題も、ひいては盛岡ブランドも、すべて「市民の覚悟」にかかっている。ぼくたちは覚悟を試されている時代に生きているのかもしれない。

追記:20代の男性が何人か参加していた。嬉しいことだ。

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コメント

 僕は、岩手のことを常々「周回遅れのトップランナー」と説明しています。よそ者である僕のしみじみとした感想と決意です。

投稿: kajipa | 2006年5月20日 (土) 11時14分

う~ん、含蓄ある言葉ですね。周回遅れのトップランナー、これ、使わせてくださいね。

投稿: 本人 | 2006年5月20日 (土) 11時24分

 この言葉は、全国一競争心の強い県民性を持つと言われている岡山で、小学校2年生からずっとリーダーであった僕が、北東北、特に南部地方の人々の暮らしや文化に触れ、自ら、また、同時代を生きて来た他の地域の有りようを見て、自虐的な思いを持って語る時の言葉です。
 つまり、あんなに無理をして時代の先端を目指して走ってきた地域が行き着いているところは、「がんばらない」生活を地道に続けていた(続けるしかなかった?)岩手の姿であった、ということです。しかも、その岩手の姿に追いつくためには、それらの地域はまた一周多く走って、今まで作り上げて来たものを元に戻さなければならないのです。この、無駄な走りが、戦後私たちが求めて来た「豊かさ」だったのです。これをやっている限り、社会も文化もどんどん疲弊していきます。
 僕が岩手に居たいのは、走ることのばかばかしさに気づいたからです。
 でも現実は、「あれ?」ですが。(爆)

投稿: kajipa | 2006年5月20日 (土) 13時00分

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