悪意の不在
昨日(18日)の岩手日報朝刊5面「読者の広場」のカメラスケッチという記事に関して、岩手県ツギノワグマ研究会が下記の文書を提出した。
平成18年12月18日
岩手日報社
読者センター 様
岩手県ツキノワグマ研究会
事務局
〒020-0401 岩手県盛岡市手代森16-27-1
18日掲載の「読者の広場」の写真「路傍のキツネ」について
お世話になります、岩手県ツキノワグマ研究会事務局の藤村と申します。
早速ですが、貴紙18日付朝刊5項の「読者の広場」に、読者が投稿された『路傍のキツネ』の写真と「(紅葉も終わりかけた焼石ビーチラインで、車が通っても逃げようとしないキツネに出合いました。ことしの山は餌不足のようです。パンをちぎって与えました。来年、また合いたいものです。」というキャプションが載っておりました。
社会に対して大変危険な内容をはらんだ内容でしたので、そのことを貴社にお伝え致します。
以前であれば美談とされる野生動物への餌やり(餌付け)ですが、野生動物による農作物被害や人身被害、精神的な被害が大きな社会問題となっている現在では、野生動物への餌付けは社会悪として糾弾されるべき行為であって、貴紙 のように社会的な影響力の強いマスコミ媒体での掲載は大きな誤りであると指 摘致します。
岩手県自然保護課のホームページには、【野生動物への餌付け防止について】のお知らせが掲載されております。米国では国立公園など公共の場所での野生動物への餌付け行為は、法的に罰せられています。
人が接近しても逃げない、あるいは、人から食べ物をもらう今回のキツネは、すでに同様の経験をしている(人から餌をもらうことを学習している)と推測されます。このような餌付けされた野生動物は、人への警戒心が薄れ、人との間で様々なトラブルを起こす可能性が高くなります。その結果、その野生動物は人に害をなす動物として、有害駆除されることになります。以上の理由から、米国では『野生動物の餌付け(野外に生ゴミを放置することも含む)が、 野生動物を殺すことになる』という標語が作られています。
また、本州でのエキノコックス症の確認例はわずかですが(青森県、岩手県、秋田県など北海道を除く全国で77人)、多包性エキノコックス症が道内に拡大している北海道では、感染源となるキツネやイヌなどの保虫宿主に接触しないように住民呼びかけています。狂犬病の保菌者の可能性の高いアライグマをはじめ、野生動物との安易な接触は公衆衛生上問題が多いというのが、最近の常識でもあります。
岩手県内でもツキノワグマやシカ、カモシカなど野生動物と人との軋轢が大きな問題となっております。また、五葉山周辺は、餌付け行為などによる人慣れしたサルが増え、猿害問題が既に発生しており、専門家からはサルを見たら追い払うようにとアドバイスが出されております(貴紙に掲載された記事に書いてあります)。
以上のような状況であるにもかかわらず、貴紙が野生動物への餌付けを賞賛・ 賛美するような『路傍のキツネ』の写真とキャプションを掲載したことにより、同様の行為をする読者が今後増え、益々野生動物と人との軋轢が増加するのではないか。そして、餌付けされた(人から食べ物をもらうことを学習した)多くの野生動物が、結果的に駆除されるのではないかと危惧しております。
今後同様の投稿が読者からされても、新聞に掲載しないことを強く申し入れ致します。
ご不明の点がございましたらお気軽にお問い合わせ下さい。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
岩手県ツキノワグマ研究会
事務局長 藤村正樹
記事(と写真)の投稿者に悪意がないのは明らかだ。しかし「悪意の不在」が弊害を引き起こすのであれば、容認されるものではない。
また、新聞という媒体が何の疑いも持たず掲載したことは思慮に欠けていたといわざるをえないと思う。
野生生物との正しい付き合い方を知ってもらうようにつとめていかないと(それを広めるのが新聞の役目であろう)、日光で大暴れしているサルや、すっかり観光客慣れしてしまった北海道のキタキツネのように「野生生物は迷惑な存在」となってしまう。人間の趣味趣向や一時の感情で野生生物の不幸を招いてはならないと思う。
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