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ヴィクトリア朝時代の知識人たち

イギリスという国はヴィクトリア朝時代が一番おもしろいと思う。

ヴィクトリア朝時代を代表する知識人のうち、ジョン・ラスキンはよく知られている。次いでウォルター・ペイターの名が知られているだろうか。
この二人に比べて、ロジャー・フライはその著書が流通していないこともあって、あまり知られていないような気がする。
画家を目指したが(一応、画家でもあったわけだが)、そちらでは大成せず、批評家・鑑定家として一家を成した。イギリスでゴーギャンやセザンヌな ど後期印象派を紹介(というよりも、擁護といったほうがいいかも)した功績が大きい。ロジャー・フライがいなかったら、イギリスの美術界は世界から取り残 されただろうと言われているくらいだ。

そのロジャー・フライについて、なんとヴァージニア・ウルフが書いた伝記。親族からの依頼に応じたため、「ぬるい」という評価もあるが(その点については訳者による「あとがき」が充分な補足になっている)、ウルフほどの人が書いたのだから、おもしろくないわけがない。

ロジャー・フライはケンブリジッジ時代に自転車を覚えたようだ。しばしば自転車でスケッチに出かけたり、フランスで美術館巡りをしたという記述があり、親しみを感じる。

ニューヨークのメトロポリタン美術館の礎を築いたJ.P.モーガンの意外な人物像(俗物!)をこの本で知った。


ウォルター・ペイターの名は知らなくても、「あらゆる芸術は絶えず音楽の状態に憧れる」という名言を知らない人は少ないだろう。これはペイターの著書『ルネサンス』の中からの言葉だ。

ペイターは「唯美主義者」としてオスカー・ワイルドらに大きな影響を与えたということになっているが、この本を読むと、どうもそうではなかったことが明らかになる。ただし、そのような「ペイターの人物像」が描かれているのは、最終章のほんのわずかなページでしかない。

したがって、この本のタイトルに「肖像」とあるのは、いささか言い過ぎの感が否めない。本書はペイターの主要な著書を丁寧に解読した案内書である。「伝記」を期待しても応えてはくれない。

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