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『東欧革命1989―ソ連帝国の崩壊 』を読む

このところ冷戦ものの小説、映画、ノンフィクションを見たり読んだりしている。

冷戦が集結した80年代末を私はリアルタイムで経験している。
にもかかわらず、東欧革命の実態を知らなかった。当時、新聞にちゃんと目を通していればよかった、と悔やむことしきり(あるいは、新聞も現実を報道しきれていなかったかもしれないが)。今になってあわてて本書を手にとったりしている始末だ。

以下、気がついたことを列記する。

○東欧の共産主義が、西側からの莫大な援助によって支えられていたことを本書で知った。つまり、冷戦は西側が自らつくっていた、ともいえる。

○ソ連が軍事産業にばかりお金を注ぎ込んでいたのは、「ソ連がまともにつくれる工業製品は兵器しかなかったから」だという。なるほど。

○チャウシェスク(と同等の権力を持っていた妻)の処刑は、当時、ショックだった。そして、「なんだ、フランス革命のころと同じことをやっているのか」と醒めた思いで受け止めた。本書によって、軍部の動乱を鎮めるために必要だったことがわかった。

○ゴルバチョフは共産主義を消滅させるのではなく、再生させるつもりだった。結果的に、消滅させることになっただけ。

○東ドイツでは、ソ連の手から離れて、ソ連よりもしっかりした(まともな)共産主義社会を築こうとする動きがあったはずだが、それが本書では触れられていない。

○ベルリンの壁崩壊にもっとページを割いてもいいような気がしたが、それは私の感傷にすぎないのかもしれない。あのとき、某局の中継で「昂奮した おじさんがチェロを弾いています」という女性記者のコメントと共に映しだされたのは、あのムスティラフ・ロストロポーヴィチだった。
ロストロポーヴィチさえ知らないような人があの国で記者をつとめていたのだ。日本はなんと幸せな国であることか。

○東欧の共産主義は自ら崩れていった。その過程をみると、日本でも似たようなことがいつ起きてもいいような気がする。

○東欧革命は、あるときはドラマチックで、あるときはまるでドタバタ喜劇で、あるときは悲劇で、あるときは偶然による産物だった。

東欧革命―権力の内側で何が起きたか (岩波新書)の著者による翻訳がみごとだ。

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