岩手県遠野市や遠野商工会は地場産物や商品、飲食店を対象とする独自ブランド「TOHNESE(トネーゼ)」の認証制度を始め、第一弾として食品、家具など18品目を認証した(トネーゼは、イタリア語で「遠野の人」という意味。サレルノ市と姉妹都市を結んでいる遠野ならではの命名だ)。
民話の里らしくスローライフを基本理念に、有識者らでつくる審査会が独自性や品質管理、生産情報の開示など下記の10項目にわたって審査する。
・「遠野のもの」「遠野の人」という事実
・トネーゼの個性、価値観、こだわり(スピリッツ)
・市場・顧客ニーズの理解
・商品における独自性
・商品における革新性
・業界の品質基準・法令遵守
・環境への配慮
・生産情報の開示(トレイサビリティ)
・情報力(生産者の演出力)
・顧客対応力(コミュニケーション度)
いくつか気になる点がある。
一回の申し込み料金は3万円。市がつくって配布するチラシなどに掲載される広告代金と思えば、この料金はさほど高くないのかもしれないが、むしろ料金は無料にして、その分、認証のハードルを高くするほうがいいような気がしないでもない(ただより高いものはない)。
というのも、今回トネーゼ・ブランドに認証された発泡酒は、その筋の「通」のあいだではあまり評判が芳しくない。味の問題ではない。合成着色料を使っているせいだ(たとえ健康上問題がないものであっても)。
上記の認証基準を一見して感じたのは曖昧さだ。判断を主観に頼らざるを得ないようなところが見受けられる。だから、逆に「スローライフと合成着色料はイメージが合わない」と主観で反論されもする。そういう「脇の甘さ」があるような気がする。
盛岡に住んでいるぼくからすると、遠野は「遠野」というだけで充分に大きなブランドだ。「これ、遠野のお土産だよ」といえばどこでも通用し、喜ばれる。その知名度は盛岡などとは比較にならず、羨ましいくらいだ。他県からいらした方々にとっても、今さら「ブランド認証」などあまり意識しないんじゃないだろうか。あるいは、地元の意識を高めるための方策なのかもしれないが、それならそれで違ったやり方があるだろう。
4年前、ぼくはイタリア北部のヴァッレ・ダオスタ特別自治州に招かれ、観光状況やスローフードなどを視察してきた。お隣のピエモンテ州がスローフード発祥の地として脚光を浴びたことから、アオスタも官民共同で農業、産業、観光に取り組んでいた。
その目玉のひとつアグリツーリズモ(農家が経営する民宿)に関して、州は厳しい法律(自給率、耕地面積、生産品目の種類と生産量など)を定めていた。それをクリアしないとアグリツーリズモの宿として認められないのだ。
「ここまで来るのに十年近くかかっています。日本なら1、2年でやってしまうことでしょう。でも、やるとなったら、きちんとやるのがイタリアです」
州政府の方がそうおっしゃるのを聞いて、少し恥ずかしい思いがしたものだ。日本ではまだそこまで徹底していない(もちろん、徹底しているところもあるだろうけれど)。
盛岡ブランド認証についても以前にぼくは疑問を呈した。遠野に限らず、そもそも役所というところは標準化や平均化を目指す宿命を持っていて、特化には弱い。つまり、ブランドとは対局にあると言っていい。その点に留意して、自治体によるブランド認証が、すでに定着しているブランド価値を逆に低めてしまうようなことにならないように運営してほしい。
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